スペイン1-3フランス

 鈍重なフランスが重たく勝利した。要するに早い攻めさえさせなければいいんだろ、とばかりに中盤で相手のスピードを落とし、重たいセンターバックが引いてがっしり守る。スペインにスピード系のFWがいないことがここまで効いてくるとは。さて、ではこの守備戦術はブラジルに通用するんだろうか? 大いなる疑問ではある。

 ジダンは老骨に鞭打って頑張っていた。スペインの選手がレアルでの姿を見慣れて、舐めきっていたのかもしれない。

 これでベスト8が出そろったが、実にその内6チームが優勝経験国である(ドイツ、アルゼンチン、イタリア、イングランド、ブラジル、フランス)。出場した優勝経験国はすべて勝ち上がったことになる。こんなことになったのは、出場国が増えて強豪国の予選落ちが減った上に、今大会は実力派の中堅国(オランダ、チェコ、メキシコ)があっさり消えたのと、アジア・アフリカ勢のサプライズがまったくなかったせい……ということになるんだろう。してみると、ヨーロッパの強豪国的にはこれくらいの地域バランスがちょうどいいということになり、意外とアジア枠削減されなかったりして!?

ポルトガル1-0オランダ

 両チームとも、相手のストロングポイントを殺すための戦術をしっかり練ってきた。ポルトガルロッベンに突破されないように、右サイドは深く引き、必ずボランチも戻ってきて二人で挟み込むように徹底した。これはほぼ成功して、ロッベンは試合のあいだじゅうほぼ封じられていた。ただ、それでは済まないのがオランダで、今度は右のファンペルシーが暴れまわり、何度もゴールを脅かした。
 オランダの方はクリスティアーノ・ロナウドを潰すためにイエロー覚悟で削りにいった。これも大成功で、イエロー二枚と引き替えにロナウドをピッチ外に送り出した。こういう「リアリズム」はどうも好きになれない。オランダなんだから、もっと理想主義に殉じて欲しかったんだが、どうもこのチームはやることがせこくていかん。プレゼントボールを返さずに攻めにいってみたりね。
 ともかく、この試合がイエロー20枚、退場者4人という凄まじい結果になったのはこのオランダの汚いゲームのせいである。後半のポルトガルの頑張りは見事だった。自業自得の結末はイングランドが笑っただけかな。

トーナメント一回戦 ドイツ2-0スウェーデン

 クローゼのワンマンショー。
 ともかく体の使い方が素晴らしい。するっとDFの前に体を入れて、でかい体で相手の動きを封じてしまうのだ。そんなに足が速いわけでもないと思うのだが、一歩目が早いのと大股なおかげか?こぼれ球への反応も抜群にいい。ヘッドも的確で、体を使ったポストプレイは鉄壁。決して下手だとも思えないスウェーデンのDF陣を手玉にとって、ポドルスキの得点をお膳立てしていた。正直、こんなにいいFWだとは思っていなかったが。

 ドイツの問題であるひょろひょろセンターバックだが、イブラヒモヴィッチのポスト・プレイを完璧に封じこめてスウェーデンにリズムを作らせなかったのは見事だった。あとは裏を取られたときとドリブルへの対処か。やはり真価を問われるのは準々決勝ということになるかもしれぬ。

 リードしたあとはひたすらミドルシュートを打ちまくっていた。シュヴァインシュタイガーがどうも戸惑っているようにも見えたが、あれがドリブルで切り込めるようになると、噛み合って恐ろしいチームになるかもしれない。

雑感

朝日の記事より

中村俊輔は「やはり何人も海外に出ないと。DFの間合いとか、高さとかが全然違う」

いや…今回の大会でチームの中心となることが期待されつつ、衆目の一致するところ、いちばん戦えなかった人にそれを言われても…今頃そんなことを言ってるようじゃ、

主将の宮本は抵抗感も示した。「(地元開催の利があった)02年大会とは違いがある。この4年間、やってきたことは間違いではなかったが、やりたいことを出せないのが(外国での)W杯だった」

四年間は無駄だった、と言われても反論できんよ!

こういうのを聞くたびに思うのは、海外に行ったって選手が変わるわけじゃないってことである。セリエAに行ったからって柳沢がシュートを打つようになるわけじゃないし、スコットランド・リーグに行ったからって俊輔が強い精神力を身につけるわけじゃないのだ。

F組 日本1-4ブラジル

 中田が泣いていた。珍しいものを見た。今回のW杯でいちばん新鮮な驚きを得たのはそのことだった。中田が本気で戦い、本気で怒り、本気で絶望している。決してそんな場面は見せない男だったのに。何に対して泣いてたんだろう。自分の不甲斐なさかな? だったら泣かなくていい、と言いたい。中田だけは泣かなくていい。だから、このままサッカーを続けてくれ。カズみたいにいつまでもボールを蹴りつづけていてくれ。

 試合はオーストラリア戦のリプレイを見るかのようだった。幸運な先制点をあげたが、気の抜けたマーキングでフリーにしてはいけない選手をフリーにして同点にされ、逆転されたとたんにばたっと足が止まる。そのあとヒデだけが必死で走っていたのも同じ。なんでこんなに弱いチームになっちゃったんだろう? たしかアジア杯のときは、「戦術的問題はあれど、ジーコの作るチームは最後まで闘える」とか評されてなかったか? まあ日本代表って昔から負けるときは諦めのいいチームだったがね(だから韓国には勝てない)。

 それにしても、まったく動けないんで、ゴールエリアの中でだけマークしてればいいロナウドを放してしまうCBの二人といい、ジュニーノ・ベルナンプカーノの無回転キックをはじめて見るかのように無様にバンザイしたGKといい、本当にスカウティングしてるのかと疑問が…いや、それはもう言うまい。

 悔しかった。ぼくは素人だけど、サッカー観戦歴はそれなりに長いし、日本の客観的な実力ぐらいわかっている。この結果がある意味必然だというくらいはわかっていた(可能性としてはグループリーグ最下位〜ベスト16くらいまであっただろう)。中田だって当然わかっていただろう。でも悔しいのだ。ああ畜生め、また四年後か…

B組 スウェーデン2-2イングランド

garth2006-06-21

 嗚呼、オーウェン……
「風のように舞ってこい!」とグラウンドに送り出され、あのアルゼンチン戦の忘れがたいゴールを決めたのがほんの八年前。年齢的には次も可能なくらいだけど、スピード系FWだけに、正直難しいだろう。オーウェンベッカム時代の掉尾を飾るはずの今度のワールドカップで栄光を掴むはずだったのに……
 すべてレアル・マドリー移籍から歯車が狂ったような気がする。レアルの呪いですよ。

しかし、こうなると本気でFWが足りない。エリクソン、無理にでもウォルコットを使ってみるべきだったと思うがなあ。いや、この際あれか。わざと隠しておいて……

「くそっ…オレのせいでイングランドがこんな危機に…」
 そこでオーウェンの肩に手を置く男が
「マイケル、わたしにまかせておけ」
「あ、あなたは…」

「さあ、ついにウォルコットの登場です!あ、今入った情報によりますと、ウォルコットは練習中の怪我により、顔面にプロテクターをつけてプレイする模様です。今クラウチに替わってピッチに入ってきます!」
「いや、あれプロテクターっていうよりマスクだろう。ていうかあの体格、どう見ても17歳の少年じゃないんですけど。あのがっしりした肩幅、あれシア……あyつしゃ;」
「解説のリネカーさんが熱射病で倒れた模様です。さあベッカムクロスをあげた。そこにFW飛び込んだ! ヘッドで決めたーーー得意の片手を突き上げるポーズで走る!」

日本0-0クロアチア

 中田は意志の力で肉体をコントロールしようとする。今日ほどそれを強烈に見せてくれた日はなかった。もうバテバテで、キックのコントロールもままならないのに、それでもただ一人守備に走りまわれるのは何故なんだろう? サッカー選手としての才能がずば抜けているとは思わないんだけど、あの意志の力は本当に感動的なものだった。
 それに比べてプレスを逃れようと中盤の底までさがってくることだけは一人前な俊輔は……

 テクニカルな部分では、ともかくトラップが下手。もっとトラップのうまい選手を前線に起用すべきだ。どうして誰も小野をFWに育てようと思わなかったんだろう? 日本サッカーここ十年の最大の失敗はそのことだ。