F組 日本1-4ブラジル

 中田が泣いていた。珍しいものを見た。今回のW杯でいちばん新鮮な驚きを得たのはそのことだった。中田が本気で戦い、本気で怒り、本気で絶望している。決してそんな場面は見せない男だったのに。何に対して泣いてたんだろう。自分の不甲斐なさかな? だったら泣かなくていい、と言いたい。中田だけは泣かなくていい。だから、このままサッカーを続けてくれ。カズみたいにいつまでもボールを蹴りつづけていてくれ。

 試合はオーストラリア戦のリプレイを見るかのようだった。幸運な先制点をあげたが、気の抜けたマーキングでフリーにしてはいけない選手をフリーにして同点にされ、逆転されたとたんにばたっと足が止まる。そのあとヒデだけが必死で走っていたのも同じ。なんでこんなに弱いチームになっちゃったんだろう? たしかアジア杯のときは、「戦術的問題はあれど、ジーコの作るチームは最後まで闘える」とか評されてなかったか? まあ日本代表って昔から負けるときは諦めのいいチームだったがね(だから韓国には勝てない)。

 それにしても、まったく動けないんで、ゴールエリアの中でだけマークしてればいいロナウドを放してしまうCBの二人といい、ジュニーノ・ベルナンプカーノの無回転キックをはじめて見るかのように無様にバンザイしたGKといい、本当にスカウティングしてるのかと疑問が…いや、それはもう言うまい。

 悔しかった。ぼくは素人だけど、サッカー観戦歴はそれなりに長いし、日本の客観的な実力ぐらいわかっている。この結果がある意味必然だというくらいはわかっていた(可能性としてはグループリーグ最下位〜ベスト16くらいまであっただろう)。中田だって当然わかっていただろう。でも悔しいのだ。ああ畜生め、また四年後か…