B組 イングランド1-0パラグァイ

 ベッカムが目立った試合だった。もともと献身的な選手なんだけど、入れ込み方が凄かった。ジェラード、ランパードの中盤守備がいまひとつだった分、ベッカムの本気っぷりが伝わってきた。ベッカムって、どう考えてもハンサム過ぎて損している。あのするっと伸びるクロスとフリーキックの球筋の美しさを見るべきだ。素直な性格が球筋にまであらわれている。今大会がベッカムの大会になってくれるといいなあ、と思う。

 ただ、戦術的にはあれだけ支配して、左右からクロスをあげまくった前半に追加点をあげられないようでは駄目だろう。クラウチ、やっぱり当たられると苦しいか。いずれにしてもクラウチオーウェンの代わりであってルーニーの代わりにはならない。オーウェンを下げてクラウチ1トップにしたあとの方がやることが分かり易かったね。

開幕戦 ドイツ4-2コスタリカ

 実はドイツ、なかなか選手は揃ってるんだよね。ちょっと若すぎるんだけど、南アフリカ大会では悪くないチームになると思う。
 問題はやっぱり「若すぎる」ところにあって、今日の試合だとクローゼの二点目で3-1になったあと、コスタリカが完全にやる気を失っていた10分くらいの時間帯があったんだけど、あそこで止めの点を取りにいかなかった。むしろ弛めてしまった。イタリアならそれでいいだろう。だけどドイツはあそこで駄目押しを入れて、もう勘弁してくれ、という気分になるまでとことんやらなければいけない。
 クローゼはさすがにそこんところわかってたみたいだけど、それまで一人でサッカーやってたシュヴァインシュタイガーが弛んでしまったところが若さだと思う。そこをなんとかしないとベスト16どまりじゃないか? やっぱカーン使うべきだと思うんだけど。

新潟2-2鹿島@新潟スタジアム(テレビ観戦)

選手の本当の力は、いかに決定的な場面で決定的な仕事をできるかで計られる。決定的な場面が回ってくるかどうかということまで含めて、選手の力ということだ。

そういう話になると思い出すのが清水と磐田のチャンピオンシップの一場面である(今調べたら1999年のことだった)。第一戦、磐田が勝って迎えた清水ホームの第二戦、磐田が先制し、直後にアレックスが退場になってもはや絶体絶命である。そこでFKのチャンスを得た澤登がものすごい集中力を見せてキックをねじ込んだのだ。スタジアム中の祈りを背負ったかのような強烈なキックだった。スタジアムの祈りを背負える選手こそがスターなのである。

中村俊輔がもうひとつ信用できないというのはどうもそういうギリギリのところで決める場面を見た記憶がないからである。

で、今日なんだけど、新潟2-1鹿島で迎えたフリーキック、小笠原は絶対に決めるだろうと思ったよ。

You’ll never walk alone

リヴァプールCL決勝進出。オーウェンはどんな気持ちでテレビを見ていたのだろうか。
ところでリヴァプールと言えばYou'll never walk alone

When you walk through a storm hold your head up high
And don't be afraid of the dark.
At the end of a storm is a golden sky
And the sweet silver song of a lark.
Walk on through the wind,
Walk on through the rain,
Tho' your dreams be tossed and blown.
Walk on, walk on with hope in your heart
And you'll never walk alone,
You'll never, ever walk alone.

これ、どう見ても勝利の歌ではない。最初から嵐が来て、夢が吹き飛ばされてしまうことを予期しているんだから。「みんなで一緒に歩けば、嵐も怖くない」と苦しみを耐え抜くための歌なんだよね。

もうひとつ、有名なフットボール・ソングと言えばAlways look on the bright side of life これはマンチェスター・ユナイテッドのファンの歌だ。本歌はもちろんモンティ・パイソンの『ライフ・オブ・ブライアン』。磔刑に処される場面でみんなで合唱する名曲なんだけど、いくら「人生の明るい部分だけ見ていこう」って歌っても、あとは処刑されるだけ!

つまりフットボール文化とは敗者の文化だということである。リヴァプールマンチェスター・ユナイテッドのファンですら負けを堪え忍び、自分たちを鼓舞しなければならないのだ。ファンとは負けつづけるものである。長い敗北が続き、そして一瞬の歓喜が訪れる。叶えられた祈り。

たとえ敗れようとも

鹿島2(2-0)0FC東京味の素スタジアム

アレックス・ミネイロとフェルナンド、野沢が負傷欠場の鹿島はコオロキ、増田とユース世代が二人もメンバーに入るかなりしんどいメンバー構成。しかし、それ以上にヤバかったのはFC東京の前線。まったく怖さがなく、セットプレー以外はほとんどチャンスらしいチャンスもない。希望の星であるはずの石川直もスピード以外にはまったく見るべきところがない。スペースに出したボールにせーので競争するというシチュエーションならまだ勝負になるが、一度DFと正対してしまうともう何もできないのである。今の鹿島でいちばんヤバイと言われる両サイドバックの片割れ、石川が余裕をもってボールを奪ってしまうというくらいで……

今日のMVPはボランチのポジションに入った小笠原。緩急自在のゲームコントロールに加えて的確なボールカット。あの落ち着きぶりは素晴らしい。ピッチ上の22人の中で、一人だけ違うレベルのサッカーをしていた。

東京の攻め手はほとんどカウンターしかなく、鹿島がボールをキープしだすと取りにくることすらしない。サポーターは盛大にブーイングしていたものの、あれ、どっちかと言えばホームで相手DFにボールを回されてもプレッシャーすらかけない味方FWにブーイングした方がいいんじゃないか?

「VIVA東京 たとえ敗れようとも」という横断幕が出ていた。「勝てば官軍、何を言われようとしょせんは負け犬の遠吠え」をチームカラーにする鹿島相手に試合前からそれじゃあね。先制点を取った途端にお得意省エネサッカーをはじめた鹿島が後半PKミスとかあって攻め込まれていたけれど、まったく負ける気がしなかった。東京、どっちかと言えばJ2降格を心配した方がいいと思う。